インタビュー 2019年05月17日
前回に引き続き、ヒューマンリソースイノベーションの亀山さんにSmart Biz立ち上げまでの経緯をインタビューした記事となります。
■インタビュワー;
では、早速ですがSmart Bizでは、どういった講座を配信していく予定ですか?
■亀山さん;
受講者一人一人が、多様な個性を余すことなく発揮し、問題を解決できるようにサポートする講座を出していく予定です。
■インタビュワー;
いわゆる、コンピテンシー(高い成績や業績に繋がる行動特性)を高める講座みたいなものでしょうか?
■亀山さん;
いい質問ですが、それがちょっと違います。コンピテンシーって何かという話になりますが、例えば社員サラリーマン100人が同時期で入って、5年後・10年後に、その中で突出して凄く良い成果を上げている人がどこの会社にもいらっしゃいますよね。
■インタビュワー;
そうですね。僕が考えていたコンピテンシーは、答えは1人ずつじゃなくて、「こういう風にものを考えたり、こういう風に行動をする、何かあった時にこういうことをする」と言ったような、成果を出す人の行動様式みたいなことをみんなで真似するって認識でした。
■亀山さん;
おっしゃる通りですね。実際15年以上前にはコンピテンシーは流行ったりしていました。ですが、僕は昔のコンピテンシーの概念には課題があると思っています。
■インタビュワー;
どんなところに課題があるのでしょうか?
■亀山さん;
決まっている答えが1つだけあるわけではないですが、何かわからない未知の状況にぶつかった時に最適な対処をして、その状況を乗り越えていける能力というのはコンピテンシーの一種と言えると思います。ですが、例えば1㍘人が同じ壁にぶつかった時に、その内の1人がその壁を超えられたとして、その超えられた人の行動特性などを他の9人も真似しさえすれば、全員が乗り越えられる訳ではないのではないでしょうか。
■インタビュワー;
壁を乗り越えた人の行動特性を真似るだけで、他の全員が同じように超えられるとは限らないですね。みんな違う個性を持っていると尚更ですね。
■亀山さん;
だから、そのコンピテンシーというのは実は危険な言葉で、じゃあその行動特性をその会社に応じたパターンで分析をして、その行動様式を取ることをあたかもマニュアルのようにして、その行動様式をとる若手ばかりがいたとします。その会社は果たして本当にうまくいくのだろうか、と考えると、私は違うのではないだろうかと思います。
■インタビュワー;
言われてみるとそうですね。確かに社内で活躍している人は、自分の強みを理解して突き詰めている方が多い印象です。
■亀山さん;
要するにいろいろな多様性の中でその行動をたまたまとる人がいたから、その人が成果を上げられたと思うし、その時、その環境、与えられた状況によっても、その行動特性だけが正解になっていたかというと、そうではないと思います。
■インタビュワー;
全員が壁を乗り越えるためには、どうあるべきだとお考えですか?
■亀山さん;
それぞれの個性とか多様性を持つ人たちが個性を最大限に発揮できて、 誰かに邪魔されたり規制されたり行動阻害されたりすることなく、活躍できる環境があるべきだと思います。
■インタビュワー;
みんながみんな、この行動様式を取りなさいなんていう風に当てはめちゃったら、「金太郎飴」のようなのばかりが出てきて多様性のない会社が出来てしまいますね。
■亀山さん;
そうなんですよね。問題にぶつかった時に、いろんなサポートを受けてきたおかげで自分の個性や能力を最大限に発揮できて、そういう問題をクリアできる、10個問題が来たら8つは解決できるような、経営者であったり、将来事業を作る存在になってほしいと思っています。
ですので、コンピテンシーと言うよりは、前向きな力を生み出す栄養素や、行動のための準備や指針になるようなものを作りたいですね。要するに、ワーク・エンゲージメント(ポジティブで生き生きとした活力のある状態)を生み出すための心理的資本になっていきたいと思います。
■亀山さん;
結局は、どんなに大きな組織でも、小さな組織でも、最後に決め手となるのは「人」だと思いますし、私は「人としての成功」が「事業としての成功」と考えています。まずは、Smart Bizでは表現が難しいですが、シンプルに「色々な人をサポートする」ために今後も(サービスを)成長させていきたいですね。
■インタビュワー;
前回は、「個性のある色々な人」をサポートしたいとおっしゃっていましたが、具体的にそう思ったきっかけがあったんですか?
■亀山さん;
私自身が3,700人の社員がいる製鉄所で働いてきた中で、1日1万トンという製品を作るためには、ずば抜けて優秀な一人が頑張ったとしても不可能で、3,700人の全員が持ち場持ち場で100%に近い力を発揮して頑張ってもらわないと実現出来ません。例えばきわめて優秀な所長がいたとしても、その人1人ではなく、むしろ残りの3,699人に本気を出してもらう必要がありました。で…どうやったらみんなにその力を発揮してもらえるのかな?と考えた時に行き着いたのは、技術や作業の標準などに頼るのではなく、働くひとりひとりの気持ちに寄り添い、心の鐘を鳴らすような語りかけ、精神の交流を大切にするエモーショナルマネジメントが必要だという結論でした。
■インタビュワー;
エモーショナルマネジメントですか。実際どのようなことをしたのですか?
■亀山さん;
エモーショナルマネジメント(=従来のトップダウンのマネジメントではなく、相手の気持ちに寄り添い、心理的資本をたくさん投入し、元気づけ、動機づけていくこと)というのを特に意識したのは、やはり製鉄所で3,700人の直属の部下を抱えた時だったと思います。
現場を監督しているトップの統括たちとは、じっくりと話すために少人数に分けながら、何回も懇談会をしたり、飲み会をしたりして色々な相談も受け、それに応えてきました。
統括の下に作業長が155人くらいいたのですが、この方たちとも、少しの人数にわけて全員と飲み会を行い、様々な話の中で泣いたり笑ったりしながら交流しました。私の知らない現場での様々な活動や現象を聞くこともできて、私の方がたくさん勉強になりました。感謝しかありませんね。
さらには、実際に製造現場の前線でチームを率いているグループリーダーが550人ほどいましたが、彼らとは主に早朝シフトの際の終了時に数人ずつ2時間くらい残ってもらって、現場での困りごとやこれまでの不満・要望などを話題として会話する中で、お互いに最適な距離感をつかむことが出来て、大きな一体感を醸成することが出来ました。これを可能な限り、毎日のように実施してきたのです。
もちろん、様々な要望が出ますので、これは自分への宿題として、出来る限り迅速に応えてきました。リーダーさん達との会合はいつもとても盛り上がったのですが、実は残り約100人余となったところで私が転勤となってしまい、あとは後継者に渡さざるを得なかったのが、非常に悔しかったです。(笑)
■インタビュワー;
そこまでの人数に実際に関われるのは、シンプルにおそろしいです。。。
■亀山さん;
実際にマネジメントする立場の人間に、「自分のことだけではなく、自身の家族、仲間(部下)、仲間の家族、子供…」全ての関わっている方の人生を背中に背負っているということを自覚してもらって、責任も大きいけど、襟をただして仕事に真摯に立ち向かうことを知ってもらって、こんな感じの自分の思いを部下に伝えるためには、自分自身が誰よりも「知識」「経験」を付けてもらいたいって思ってたからね。実際に、エモーショナルに心と心で向かい合わないと組織ってうまく機能しないと思うんだよね。
■インタビュワー;
なんで上手く機能しなくなるんですか?
■亀山さん;
例えばチームの中で、自分がエンジニアとして何か成果を上げていても、その人が幸せのための道を歩んでいないと実感して、なんでこんな事やってるんだろって思った瞬間に、その人だけじゃなく、その思いがチームにも伝染して、チームが上手く機能しにくくなっちゃうからですね。人の思いって良くも悪くも伝染するからね…その組織を構成してる人が一人一人、仕事の中で幸せな自己実現をするというところを目指していないと会社を崩壊しやすい傾向があると思うよ。
■インタビュワー;
このSmartBizを通じて、こうなってほしいというものはありますか?
■亀山さん;
「生きるための知恵」、もしくは、「正しい知識を身に付けるためのメタ知識」、そういうものを自分の中に取り込んで、本当に実力のある社会人になってほしいと考えております。
また、「賢く生きる手法、心の持ち方」を学んで、自己実現を目指し、本当にやりたいことを実現できる人間になってほしいと考えております。そして、自分自身を超えて、たくさんの人々に良い影響を与えて、その人たちひとりひとりの自己実現も考えていく事ができる人間になり、周囲の人々を豊かに幸せにさせてあげられる力をつけてほしいと思います。かなり遠大な話になりましたね。
■インタビュワー;
自己実現のみで終わらせないのですね!
■亀山さん;
その人だけではなくて、周りにいる家族や仲間、みんなが幸せになるようにチームの中でどう振る舞えばいいのかというところも大切です。もちろんリーダー自身幸せにならないといけない。そのための知識や生き方といった講座も揃えていく予定です。そうは言っても、まだ経営はわからないよ…という人には、基本的なビジネススキル、マネジメント、マーケティング、組織の構築などの、 ビジネスコンテンツも、もちろん基本的なメニューとして揃えていきます。
■インタビュワー;
今後はどのようにコンテンツを増やしていったりしますか?
■亀山さん;
短期的には、様々な先生からインタビューも行っていく予定ですね。インタビューに登場していただく先生は、特にマネジメントについて教えてくださる先生や、先ほどお話しした「様々な局面での対応方法」の考え方であったり、学問であったり、手法や体験談を載せて行くつもりです。
■インタビュワー;
今後のSmart Bizに期待がふくらみます!インタビューありがとうございました。最後に一言お願いします!
■亀山さん;
SmartBizは「血の通った関係」を、提供側と受け手との間で作り上げていきます。
今回、ヒューマンリソースイノベーション株式会社代表取締役社長の亀山さんに「SmartBiz立ち上げの経緯、思い」そして「エモーショナルマネジメント」についてインタビューさせていただきました。
最近では、トップダウン経営、カリスマ経営者と言われる企業が多い中、本当に伸びる、伸び続ける会社とはどのような会社なのかを考えさせられるインタビューとなりました。
「自分に関わる全ての人の人生を背負っている自覚」、そして「心と心を突き合わせられるかどうか」これが鍵な気がしますね…
次回以降のインタビューもお楽しみに!